息子帰る
半年かかってようやく、息子が帰ってきた。
自宅周りをリハビリ散歩していると、同じ棟の方に会う。
こんにちは。退院しました!と挨拶すると、腫れ物から挨拶されたびっくり具合でお答えいただき恐縮だ。
うちの子蘇ったぜ?よろしくな!
年末、年明けの一時帰宅時より、直立姿勢が安定して、できることが増えた。
片手杖で歩いて家中移動できる。
トイレも風呂も1人でこなせる。
なんと、キッチンに立って、1人でインスタントラーメンを作ることもできた。
作った丼は運べないんだがな。
昨日はとりあえず一緒に帰ってきてリハビリも一緒にした。
今日は、わたし1人で買い物に出てみた。
あの子を1人にして大丈夫だっただろうか。
闇雲に不安がもやもやと湧き出してくる。
もうしないと信じて、願ってはいるけれども。
歩行に杖が要る状態で、胸の高さの手すりを乗り越えて、飛び降りることはできないはずだ。
息子の体の不自由が、今やわたしの安堵の担保となっている。
体の回復は、できることを増やすことだから。
やり方も増えるはずだと怯える。だけどやっぱり、歩く距離が増えて、できることが増えるのは、嬉しい。
ほんとに歩き始めたあの子のあの頃のようだ。
心配で、心配で。
先回りして受け止めてあげたいけど、もう大きいから。
物理的にも心理的にも、単純に受け止められる相手ではないんだよな、と思う。
どうすればいいですか。
これでいいですか。
答え合わせは、今日明日の話ではない。
だから明日も、一緒に歩く。
ただ歩く。