8月8日 ②
部屋の中では息子がストレッチャーに寝かされていた。
目を閉じて唸っている。
唸っている。
うー、あああー、がああーとかなりの大声だ。
生きている。
初めてぶわっと涙が出て止まらない。よかった、生きてる。そんなことをたぶん言いながら、息子の頬を触ったら温かくて、また生きてると思って涙が出た。
名前を呼んで頬を撫でたけれども、私がいることが分かるのか、聞こえているのか分からない。ただ、助けてー、痛いよー、助けてー、と繰り返し、合間に唸っている。
痛いね。痛いね。可哀想ね。大丈夫だよ。助けるからね。
ちいさい頃みたいに何度も話しかけて、頬を撫でて、乾いた血の痕を拭いた。
前歯がマウスピースみたいに真っ赤になっていた。
腰椎骨折が急を要するとラバーガール大水似の整形外科医の説明を受け、深夜の手術となる。
私は切ることも縫うこともできず(当たり前だ)指定された待合室の椅子に座っている。
お昼を食べずに来てそのまま、日付が変わった。
鞄に入ったままのお弁当を思い出して、包みを開いた。
かちかちのご飯と自然解凍の冷凍唐揚げを食べた。
ちゃんと、パサついた米飯と冷たい唐揚げの味がした。